利回りだけでは見えない部分まで—書面契約型特別賞・なにわファンド内藤綾子様に聞く、顔の見える運営

「利回りだけでは見えない部分まで」——書面契約型特別賞・なにわファンド内藤綾子様に聞く、顔の見える運営

記事のポイントまとめ(30秒でわかる全体像)

  • 利回りだけでなく「なぜその利回りか」まで伝える。
    内藤様は、利回りの根拠や想定されるリスク、物件取得の経緯・権利関係などの背景まで丁寧に開示し、投資家に納得して判断してもらう「顔の見える運営」が長期的な信頼の基盤だと語ります。
  • ニッチ物件は「2年程度」の中長期運用で再生。
    大阪の長屋や文化住宅など流動性に課題のある物件は、短期転売ではなく再生・再利用を前提に余裕のある運用期間を設定し、市場変動リスクに備えています。
  • 早期償還は「なぜその時点で売却するのか」を説明できることが大切。
    賃料収益型の商品で早すぎる償還が続くと投機的な期待につながりかねないとし、計画した運用を着実に積み重ねる姿勢を重視しています。
  • 業務管理者が「NO」と言える体制と、事業者の倫理観。
    「法律に書いていないから問題ない」ではなく投資家保護の観点で判断すること、分別管理の徹底、コストを惜しまない誠実な運営こそが持続的な事業につながると語ります。

一般社団法人 不動産クラウドファンディング協会(RCA)は、「不動産クラウドファンディング・オブ・ザ・イヤー2025」において「特別賞(書面契約型特別賞)」を受賞された「なにわファンド」を運営する株式会社アンビシャスホームの内藤綾子様にお話を伺いました。

受賞ファンドは「まいど17号」。劣後比率20%と手厚く、1年ごとの解除希望受付期間を設けて流動性を確保している点、SNSやブログ、運用レポートによる情報発信が積極的で透明性が高い点が評価されました。

大阪の長屋や文化住宅といった、一般的な不動産会社があまり手を出さない物件を扱い、書面契約型で運営されている同社。担当者と直接やり取りができる「顔の見える運営」を掲げ、投資家への情報開示を徹底されています。

対談では、物件選定の考え方から、早期償還に対する姿勢、業務管理者としての心構え、そして事業者が持つべき倫理観まで、実務に踏み込んでお話しいただきました。新規参入を検討される事業者の方にも、投資家の皆様にも、お読みいただきたい内容です。

情報開示の姿勢(透明性の確保と適切な投資判断への支援)

RCA

内藤さん、本日はよろしくお願いします。まず今回の「不動産クラウドファンディング・オブ・ザ・イヤー2025」で「特別賞(書面契約型特別賞)」を受賞されましたが、日頃からファンド運営にあたりどのような点に一番注意を払われていますか?

内藤

最も重要視しているのは「透明性の確保」と「投資家の皆さまへの情報開示の徹底」です。投資家の皆さまにとって不透明な部分や不足している情報がないよう、できる限り丁寧な説明を心掛けています。

RCA

不動産クラウドファンディングは、投資家から見ると比較や判断が難しい部分もありますよね。

内藤

そうなんです。

不動産クラウドファンディングは比較的新しい業界であり、唯一の正解が存在するわけではありません。大手から地域密着型まで規模も異なれば、取り扱うアセットも多岐にわたります。

そのため、利回りの高低だけで単純に良し悪しやリスクの大小を判断できるものではありません。だからこそ、「なぜその利回りなのか」「どのようなリスクがあるのか」「事業者が何を重視して運営しているのか」を丁寧にお伝えし、投資家の皆さまにご納得いただけるよう誠実な情報開示を行うことが、長期的な信頼関係の構築には不可欠だと考えています。

地域密着型・ニッチ物件の再生と運用戦略

RCA

信頼関係の構築は重要ですね。御社が扱われている対象物件にはどのような特徴や戦略があるのでしょうか?

内藤

弊社が取り扱うのは、一般的な不動産会社があまり手を出さない、個性的でニッチな物件が中心です。例えば、大阪などの古くからの沿線にある「長屋」や「文化住宅」などですね。また、築年数が経過した物件も少なくありません。

一般的には築年数だけで評価されがちですが、私たちは立地や地域特性、賃貸需要、活用方法などを総合的に検討しています。

これらの物件は利活用や再生に高度な専門知識を要しますが、適切に活用することで地域の住環境や街並みの維持にもつながると考えています。

単に投資効率や利回りだけを追求するのではなく、物件の価値を高めて地域に還元しながら活用する戦略をとっています。

RCA

ニッチ物件は魅力的ですが、市場での流動性や売却・資金調達の難しさはありませんか?

内藤

おっしゃる通り、ニッチ物件は一般的な市場に出回るまでに時間がかかりますし、購入希望者の融資枠確保にも調整が必要です。そのため、短期転売による利益追求を目的とするのではなく、再生・再利用を前提とした「2年程度」の中長期的な運用期間を最初から設定しています。余裕を持った運用期間を組むことで、市場変動リスクへの備えを行いながら、安定的な出口戦略と資金調達の最適化を図っています。

一方で、投資家の皆さまのご意向や市場環境等を踏まえ、1年ごとに区切って再組成を行うこともあります。

投資家コミュニケーションと「顔の見える運営」

RCA

リスク管理が徹底されていますね。投資家へのリスク説明やマーケティング面ではどのような工夫をされているのですか?

内藤

金融商品としてのリスクを投資家の皆さまに正しくご理解いただくことは、非常に難しい課題の一つです。だからこそ、ブログやSNSを通じて事業の意図や背景を誠実に発信し、専門用語だけに頼るのではなく、丁寧な対話を重ねながら、リスクについて十分にご納得いただいたうえでお申込みいただけるような「顔の見える運営」を心掛けています。

金融商品である以上、利回りだけではなく、対象不動産の特性や想定されるリスクについても十分にご理解いただいたうえでご判断いただくことが重要だと考えています。そのため、表面的な高利回りのみを強調して出資を募るような広告手法は採用していません。

また、なにわファンドは原則として書面契約型で運営しています。担当者と直接やり取りができることや、手書きのお手紙やパンフレットをお届けすることなど、一つひとつの接点を大切にしながら、投資家の皆さまとの信頼関係を築いていきたいと考えています。

さらに、単に数字や利回りをお伝えするだけではなく、物件取得の経緯や地域特性、権利関係など、投資判断に必要な背景情報についてもできる限り丁寧にお伝えしています。そうした情報を共有することで、投資家の皆さまに実際の運用イメージをより具体的に持っていただきたいと考えています。

利回りだけでは見えない部分までご理解いただき、ご納得いただいたうえで投資判断をしていただくこと。それこそが、なにわファンドらしい「顔の見える運営」だと考えています。

クラファン業界の課題と業務管理者・経営層の役割

RCA

最近は同業他社や新規参入検討者からの実務相談も増えているとお聞きしました。業界全体を見渡した際、課題に感じている部分はどこでしょうか?

内藤

実務上のご相談をいただく中で強く感じるのは、許可取得やファンド組成の手続き以上に、「事業をどのような考え方で運営するのか」という経営者の姿勢や倫理観の重要性です。

RCA

事業者の内部管理体制やコンプライアンスについては、どうあるべきだとお考えですか。

内藤

不特法は比較的自由度の高い制度だからこそ、「法律に書いていないから問題ない」ではなく、「投資家保護の観点から本当に適切か」という視点が欠かせません。

特に経営陣が集客や売上を優先しそうな場面において、現場の業務管理者が率直に意見を言い、必要な時にはしっかり「NO」とブレーキをかける体制が不可欠です。

営業部門による自律的な管理、管理部門による牽制機能、内部管理部門による検証という「三つの防衛線」を適切に機能させることが重要です。営業が内部管理を突破するのではなく、自らコンプライアンスの担い手となることが、会社全体の信用を支える基盤になると考えています。

RCA

業務管理者として心掛けていることはありますか。

内藤

私自身、
「この方法でやってきたから」
「前からやっていることだから」
「他社もしているから」
という考え方には注意が必要だと思っています。

市場環境や法制度、投資家ニーズは常に変化しています。
昨日までの正解が今日も正解とは限りません。

だからこそ、過去のやり方を踏襲するのではなく、「本当に適切か」を問い続ける姿勢が重要だと考えています。

再組成案件であっても、物件の状況、市場環境、法令への適合性、リスク要因などを改めて精査し、その時点で最適と考えられる形へ見直しを行っています。

投資家の皆さまに安心してご判断いただくためにも、前例や慣習にとらわれず改善を続けていきたいと思っています。

早期償還に対する考え方

RCA

ファンドの「早期償還」についても、投資家との間に認識のズレが生じやすいテーマですね。

内藤

そうですね。早期償還は、事業者側にとって合理的な判断であっても、投資家の皆さまにとっては、予定していた運用機会が短くなることがあります。

もちろん、開発型など売却益を収益として還元することを前提とした商品では、早期償還も商品特性の一つだと思います。一方で、賃料収益を中心に一定期間の運用を予定している商品については、運用開始後あまりに早い償還が続くと、短期的な利回り実績ばかりが注目され、投機的な期待につながる可能性もあるため、私は慎重に考えています。

私自身、不動産特定共同事業は、短期的な売買益だけを追うのではなく、不動産を適切に保有・運営しながら、その収益を投資家の皆さまと分かち合っていく仕組みだと考えています。

そのため、なにわファンドでは「なぜその時点で売却するのか」をきちんと説明できること、そして計画した運用を着実に積み重ねていくことを大切にしています。

専門知識と、これからの業界課題

RCA

実務を進める上での専門知識や、今後の業界の法制度課題についてはどうお考えですか?

内藤

不動産特定共同事業は、不動産だけでなく、金融や法律、税務など幅広い知識が求められる事業だと感じています。業務管理者に求められる資格要件を満たすことはもちろん、証券化マスターなどの学びも通じて、専門知識を継続的に深めていくことが重要だと考えています。

また、法制度や市場環境も変化していくため、これまでの実務を前提とするのではなく、改正内容や新たな課題を正しく理解し、自社の運営に反映していく姿勢を大切にしています。

今後の課題としては、少額からの分散投資が広がる中で、投資家の相続の発生や、長期間取引のない口座への対応も重要になると感じています。相続が発生した際には、ご遺族の方が投資の状況を把握できず、権利承継や財産の管理・返還に時間を要する場合も考えられます。

事業者として、日頃から適切な記録管理や情報提供を行い、相続発生時にも円滑にお手続きいただける体制を整えておくことが大切です。こうした課題については、必要に応じて弁護士等の専門家とも協議しながら、業界全体で知見を共有し、投資家の皆さまやご遺族の方が安心して手続きを進められるよう、実務上の対応を充実させていくことが重要だと思います。

RCA

一般社団法人不動産クラウドファンディング協会についてはどのようにご覧になっていますか。

内藤

客観的なデータ開示や啓発活動を通じて市場の健全化を目指す取り組みには大いに共感しています。

また、協会が公表されている各種チェックリストについても活用させていただいております。実務担当者として客観的な視点で自社の取り組みを見直すきっかけにもなっており、投資家保護や情報開示の品質向上に大変役立っています。

なにわファンドは書面契約型で運営している関係で協会には加入していないのですが、投資家保護と業界全体の信頼向上という目指す方向は同じだと考えています。

新規参入事業者も含め、互いに切磋琢磨しながら市場を育てていきたいですね。

分別管理は当然の義務。変わらないのは価値観

RCA

最後に、クラウドファンディング事業者が持つべき倫理観についてメッセージをお願いします。

内藤

顧客からの出資金や賃料収入などの資産を明確に分別管理し、厳格に区分・管理することは金融・不動産事業者として当然の義務です。

実務は後から改善できます。しかし、企業としてのモラルや価値観は簡単には変わりません。

投資家保護のためのコストを惜しまず、常に高い倫理観をもって誠実な運営を積み重ねていくことが、長期的な信頼を築き、結果として持続的な事業運営につながる最も重要な基盤であると考えています。

対談を終えたなにわファンド 内藤様と当協会
対談を終えて。業界の課題から今後の展望まで、話は尽きませんでした。

なにわファンド 内藤様

2020年、株式会社アンビシャスホーム入社。ファンドの運営管理やパンフレット作成、公式X(旧Twitter)アカウントの運用など、ファンド組成から広報活動まで幅広く手掛ける。2024年より業務管理者
分かりやすく投資家に寄り添った説明と、手書きの商品説明書が高評価で、「なにわの内藤さん」としてXでは投資家の熱烈な支持を得ている。なにわファンドは2025年度クラウドファンディングアワード特別賞を受賞した。
不動産証券化協会認定マスター、賃貸不動産経営管理士、金融コンプライアンス・オフィサー2級・2級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士。

※本記事は、対談の内容をもとに構成したものです。

協会へのご相談・
お問い合わせ

入会をご検討の事業者様へ

入会案内

各種お問い合わせ

お問い合わせフォーム