石井くるみ行政書士執筆!【第2回】電子取引業務と、許可で求められる4つの体制
執筆:石井くるみ(行政書士)

〈連載〉不動産クラウドファンディング参入の仕組みと要件(全3回)
第1回では、不特法の第1号から第4号までが「役割」の区分であること、資本金1億円が難しい場合の小規模不特の登録制度について解説しました。
第2回は、オンラインで投資家から契約締結の申込みを受ける「電子取引業務」の位置づけと、通常の不特法許可で求められる財務・人材・審査体制・書類の4つの要件を取り上げます。あわせて、「インターネットで全国から募集するから大臣許可が必要」という誤解についても整理します。
電子取引業務は「第5の許可」ではない
電子取引業務は、第1号~第4号と並ぶ独立した事業区分ではありません。自社が行う事業について、インターネット等で投資家から契約締結の申込みを受ける場合に、追加して対応する業務です。
主な組合せは、次のように整理できます。
| オンラインで行う業務 | 主に必要となる事業区分 |
|---|---|
| 自社が当事者となるファンドを自ら募集 | 第1号、又は小規模第1号 |
| 他の第1号・小規模第1号事業者の契約締結の代理・媒介 | 第2号 |
| 特例事業者・小規模特例事業者の契約締結の代理・媒介 | 第4号 |
投資家との契約相手がSPC(特例事業者又は小規模特例事業者)となる場合、契約締結の代理・媒介を担うのは第4号事業者です。第3号事業及び小規模第2号事業は、SPCから不動産取引に係る業務の委託を受けるための区分であり、それだけでは投資家との契約締結の代理・媒介を行うことはできません。
なお、第3号事業者又は小規模第2号事業者が、第4号事業の許可も併せて受けることで、契約締結の代理・媒介も担い、インターネット上で投資家から契約締結の申込みを受けることも可能です。
新規参入の段階から電子取引業務を行いたい場合は、許可・登録申請時に、電子取引業務の体制を整備したうえで審査を受けます。
既存事業者が後から追加する場合は、通常の許可事業者では変更認可、小規模不特の登録事業者では変更登録が必要です。単なる届出で開始できるわけではなく、行政の審査対象となります。
クラウドファンディングシステムを導入することと、電子取引業務を適法に行えることは同じではありません。電子取引業務を行うには、法令及び国土交通省が公表している「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」(以下「電子取引業務ガイドライン」)に従い、案件審査、情報提供、システム管理、情報セキュリティなどについて、適切な管理運用体制を整備する必要があります。
通常の不特法許可で押さえたい主な要件
① 財務――資本金だけでなく、純資産と事業継続性を確認する
通常の許可では、事業区分ごとの最低資本金に加え、純資産が資本金又は出資の額の90%以上であることが求められます。
例えば、資本金1億円の会社であれば、純資産9,000万円以上が一つの基準となります。ここでいう資本金・出資の額は、事業者自身の資本であり、投資家から集めるファンドの出資金ではありません。
さらに、直近の財務状況が良好であるか、今後も事業を適確に継続できる見込みがあるかという「財産的基礎」も審査されます。資本金と純資産の数値だけを満たせばよいわけではありません。
通常の許可申請では、公認会計士又は監査法人の監査を受けた直前3年の各事業年度の貸借対照表・損益計算書等を提出します。新設法人などは、提出書類や審査上の取扱いを個別に確認する必要があります。
一方、小規模不特の登録申請では、通常の許可申請と同様の監査済み財務諸表の提出は要件とされていません。これは、最低資本金要件の緩和と並ぶ、小規模不特の実務上の大きな違いです。
② 人材――業務管理者には「宅建士」+「実務経験等」+「原則常勤」が必要
不特事業を行う事務所ごとに、少なくとも1名の業務管理者を置く必要があります。
通常の許可における業務管理者は、申請事業者の従業者であり、宅地建物取引士であることに加え、不特事業に関する3年以上の実務経験、指定講習の修了、登録証明事業による証明等のいずれかの要件を満たす必要があります。宅建士資格だけで足りるわけではありません。
また、国土交通省が公表している「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」(以下「監督留意事項」)では、業務管理者について原則として常勤し、その事務所の業務に必要な助言・指導・監督管理を行えることが求められています。常勤には、一定の体制を確保したリモート勤務も含まれますが、外部専門家に名前だけ借りるような配置は認められません。
申請準備では、資格要件の確認だけでなく、社内全体の業務分掌と流れを把握した上で、その人が実際にどの業務を担当し、どのような役割を果たすかまで決めておきましょう。
③ 審査体制――電子取引業務では、営業部門から独立した審査体制が必要
電子取引業務では、営業を進める立場と、投資家保護のために案件を審査する立場との独立性が特に重要です。
電子取引業務ガイドラインでは、基本となる体制として、営業部門から独立した審査部門を設け、審査責任者・審査担当者が営業業務に携わらないことが求められています。
これに代わる体制も認められていますが、審査担当者が当該案件の営業に関与しないこと、独立した管理部門の責任者を含む会議体がすべての案件を判断すること、その責任者が判断資料の分析・評価と判断過程の適正性の確認を行うことなど、所定の条件をすべて満たす必要があります。
したがって、「小さな会社だから審査を営業担当者だけに任せてよい」ということではありません。原則として営業部門から独立した審査部門を設けるか、ガイドラインが定める要件を満たす代替的な審査体制を整備し、営業上の判断から独立して案件を審査できる仕組みを構築する必要があります。
④ 書類――約款と社内規程類の整備
一般投資家を対象とする第1号事業や特例事業では、許可・認可の対象となった不動産特定共同事業契約約款に基づいて契約を締結する必要があります(不特法23条)。第1号・第3号事業の許可審査では、使用を予定する約款が法定の基準に適合しているかも審査対象となります。国土交通省のウェブサイトでは、参考となるモデル約款も公表されています。
約款はファンドの商品性を左右する「設計図」です。単にモデル約款をコピーするだけでなく、自社の商品設計や事業スキームに即して、契約類型、借入れの有無、開発工事の有無、不動産の取得・売却方法、利害関係人との取引、分配・償還方法などを具体化する必要があります。許可取得後に新たな約款を作成・追加し、又は既存の約款を変更する場合には、原則として行政庁の事前の認可が必要です。
また、ファンドの組成から償還までの業務が適切に行われるよう、業務方法書、社内規程、組織図などの申請・業務管理書類を整備する必要があります。これらも許可審査において、実際の業務体制との整合性が確認されます。
重要なのは、約款、業務方法書、社内規程、組織図等の内容を相互に整合させ、実際の業務がそのとおりに運用できる状態にすることです。
申請先は「大臣か知事か」を自由に選ぶものではない
通常の第1号・第2号事業では、不特事業を行う事務所が一つの都道府県内にある場合は知事許可、二つ以上の都道府県にある場合は大臣許可となります。
第3号・第4号事業は、事務所の所在地にかかわらず大臣許可です。
小規模不特についても、小規模第1号は事務所の所在地に応じて知事登録・大臣登録に分かれます。小規模第2号は、事務所の所在地にかかわらず大臣登録です。
したがって、インターネットで全国の投資家を募集するから大臣許可になる、というわけではありません。
判断の中心となるのは、投資家の所在地ではなく、事業区分と、不特事業を行う事務所の設置状況です。
よくある質問
可能です。通常の許可事業者は変更認可、小規模不特の登録事業者は変更登録を受ける必要があります。
もっとも、当初から不動産クラウドファンディングを予定しているのであれば、最初から電子取引業務を前提に組織・規程・システムを設計した方が、二重の準備を避けやすくなります。
外部コンサルタントに業務管理者の役割を委託することはできません。業務管理者は当該事業者の従業者であることが必要であり、監督留意事項では原則常勤の取扱いが示されています。外部専門家の助言を受けることと、自社が法令上の業務管理者を置くことは別の問題です。
数値を下回った瞬間に、許可が自動的に失効する仕組みではありません。しかし、純資産要件を満たさなくなることは、法令上の許可取消事由に当たります。
さらに、電子取引業務ガイドラインは、純資産不足等により財務状況が明らかに不健全である場合には、電子取引業務を行わないものとしています。
したがって、「まだ許可が取り消されていないので、電子取引業務を続けてよい」という理解はできません。
財務悪化が判明した場合には、新たな募集の取扱いと、既存ファンドの管理・投資家対応を分けて検討し、速やかに専門家や行政庁に相談する必要があります。
次回は、2026年8月21日に施行された不特法施行規則等の改正と、参入準備で先に固めておきたい4点について解説します。
※本稿は、2026年10月1日時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。一定の法人や契約に適用される特例等をすべて網羅するものではありません。個別の事業に必要な許認可や適用要件は、具体的な事業内容と事業開始時点の法令等に基づいて確認してください。
〈連載〉不動産クラウドファンディング参入の仕組みと要件
- 第1回 どの許可が必要かは「担う役割」で決まる
- 第2回 電子取引業務と、許可で求められる4つの体制
- 第3回 2026年8月改正と、参入準備で先に固める4点
この記事の執筆者
執筆者:石井くるみ(行政書士)
日本橋くるみ行政書士事務所代表。旅館業・不動産特定共同事業の許認可申請、事業計画策定支援、ファンド組成、電子取引業務、コンプライアンス体制整備等、不動産会社の新規事業立上げ支援を専門とする。
